パロール・ジュレと紙屑の都/吉田篤弘

語り手が嘘をつかずに本人にとっての事実をありのまま述べるだけでも、「その人だけ知っている事実」が省略される以上、謎は生まれる。いわゆる『謎解き』のあるミステリーではなく、人間というのは謎が存在するものなんだなー、みたいなことを吉田篤弘の本を読むと思います。こういう「引いた場所から徐々にカメラをアップにする」描写ではなく、「ミクロな視点を切り替えて徐々に輪郭を表現する」描写が出来る人にすごいあこがれる。

言葉は残される。言葉は凍結されていつか未来に解凍される。